はにかみやさんに贈る絵本

 昨日、実家から小包が届いた。中身は、古本絵本とアマゾンで購入した絵本&文庫本で、わたしにしてみればお宝ざっくざく宝箱のような郵便物。さっそくその中の1冊『カクレンボ・ジャクソン』を娘と読む。登校前の朝読書である。
 恥しがりやのカクレンボ・ジャクソンは目立つのが嫌い。いつでもどこでも目立たないように、まわりに溶け込みカモフラージができるお手製の服を着ていた。ある日、お城のパーティに招待され、どんな服を着ればいいのか困ってしまう。何しろジャクソンは恥しがりやなので、お城でだって目立ちたくない……。
 1年ぐらい前だっただろうか、原書で手にしたときはタイトル『Halibut Jackson』からイメージが湧かなくて、かわいらしいお話なのだけれど、どうもぴんとこなかった。「Halibut Jackson」と聞いて、え? あのよく食べている魚のハリバット(=カレイ)? 隠れるイメージならわたしの場合カメレオンなのだけれど、これだとカラフルで能動的過ぎ、確かにジャクソンの控えめでナイーブな気性は表せない。以来、ハリバットから受けるイメージのせいで、わたしの中では何だか不思議な絵本……ということになっていた。主人公の名前から入り込めなかったのである。
 でも、邦訳「カクレンボ……」の表紙を見て、訳者なかがわちひろさんにお礼をしたくなった。これなら英語圏の子どもたちが楽しんだように、わたしも主人公の魅力が心の底から味わえる。うれしいなあ! 
 イラストはくすんだ優しい色に包まれた一風変わったペン画という印象。表紙が――たとえば、50年代エイボンとか、コティーとか――化粧品のパッケージ装飾のようで、今から思えば、レース模様風の繊細で洒落たレトロ調が主人公の個性にぴったりだと言える。(ジャクソンは隠れているから、遠目には見えないのだけれど。)
 英国で「たちどころに古典となる作品」と絶賛されたとは、この絵本を説明するのに相応しい表現だと思った。はずかしがりやさん、はにかみやさん、あるいは見過ごしてしまいそうなことをしっかり感受できる人に贈りたい絵本である。
 娘とわたしは布と宝石に囲まれたジャクソンの仕立て部屋を見て「いいなあ〜」とため息をもらした。布やリボン、レースにボタンは、わたしたち親子の世界でもある。集めるのが好きなのだ。(asukab)

カクレンボ・ジャクソン

カクレンボ・ジャクソン