りんごの妖精たち
うちの前庭には、りんごとさくらんぼの木が2本ずつ交互に並んでいます。夏は甘酸っぱい果実の恵みを享受する季節――とくにりんごはお菓子やソース作りに大活躍です。でも、考えてみれば収穫期だけではありません。春の白・うす桃の花、そこに群がる蜂(おまけに、大きな蜂の巣……)、秋の紅葉、木を訪れるリスや小鳥の姿にも1年中楽しませてもらっているので、4本の果樹のおかげで生活がとびきり豊かに彩られています。
『Our Apple Tree』(邦訳『りんごのえほん』)は、雑誌に紹介されていた絵本です。りんごの木の1年をつづるノンフィクション絵本は多くありますが、りんごの妖精のような子どもたちが出てきて、いっしょに季節の流れを伝える絵本は初めてでした。
まず表紙に一目ぼれ。枝の上にいる女の子と男の子――本当に、妖精なのでしょうか?――の姿があどけなくて、とろんと一瞬、心がとろけてしまったほどです。なにせ、息子と娘の誕生時の顔をしているのですから。2人が表紙の中でこちらを見つめ微笑んでいます。しかも、うちのりんごの木の上で。懐かしい思い出がふんわりよみがえり、しばし追憶の中に入り込みました。なんという至福のひとときでしょう。
四季を伝える自然科学と詩情あふれるアートが調和して、愛しい絵本が生まれました。文章は簡潔でわかりやすく、イラストも親しみやすい。柔らかな子どもの心に、すうっと入り込んでいく感じです。スウェーデンの絵本ということですが、ぜひ日本語でも読んでみたいと思いました。
登校前に読むと、娘はさっそく絵本で紹介されているりんごスタンプの工作やアップル・クリスプのお菓子作りをせがみました。これから学校に行くのに、いくらなんでもそれは無理。でも、アップル・クリスプは簡単ですし、今週末にでも作ってみましょうか。読了後、彼女は大きく描かれているデリシャスの絵に向かって口を近づけ、「もぐもぐもぐもぐ」と食べるまねをしました。スナック用に切っておいたりんごがあったので、さっそく朝のスナックということになりました。
「これはママの宝物絵本。ママは、りんごの妖精ちゃんが大好きだから」。そう言って絵本を抱きしめると、娘が「これ、お兄ちゃんとしおんちゃん? うちのりんごの木に登っているから?」と尋ねてきました。心中を見事に読まれていて驚きました。(asukab)
- 作者: Gorel Kristina Naslund,Kristina Digman
- 出版社/メーカー: Roaring Brook
- 発売日: 2005/08/01
- メディア: ハードカバー
- この商品を含むブログ (6件) を見る