今年もやってきた! ハロウィンの絵本#5

 仕事が一段落つき、ホッとする。これからしばらくは時間が持てるので、家のことをしっかりやろうと誓った。ハロウィン、収穫感謝、クリスマス、お正月、バレンタイン、イースター――春まで子どもの好きな行事が続くから、マーサ・スチュアート・キッズでもめくりながら思いっきり楽しみたいなあ。息子とは、弾む気持ちを直接共有する時間が随分減ってしまった。何しろスポーツに音楽に、とにかく忙しい。でも、ハロウィン用に購入したオールズバーグの『魔法のホウキ (The Best 村上春樹の翻訳絵本集)』では、久々に彼といっしょにお気に入り作家の世界を堪能した。直接ハロウィン絵本とは謳っていないけれど、暗くなり始める季節向きのミステリアスな一冊である。
 未亡人のミンナ・ショウは、ある日魔女が残していった魔法のホウキと一緒に暮らすことになる。このホウキは働き者で、朝から晩まで掃除をし、薪を割り、水を運んだりしてくれ、ミンナは大助かりだった。ところが、近所の人々はこのホウキを悪魔の手先と呼び、ある出来事がきっかけでホウキを焼いてしまう……。
 白黒のイラストが美しくひんやりとした秋の風景を描き出し、まさに今の時節にぴったり。未亡人ミンナの気持ちになれば、案外、謎解きは簡単かもしれないけれど、仮説を立てて読み進める過程はゾクゾクしっぱなしだった。ホウキを悪魔と決め付ける狂信的な人々は、現代でいえば何の象徴なんだろう。
 渋いセピア色の装丁は、背高のっぽでスタイリッシュ。表紙は大人向けの顔をしているが、内容は11歳の息子でも十分に楽しめた。(asukab)

  • 日本語版の書影がないので、米国版で

The Widow's Broom

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