ケーキと幽霊 ハロウィン絵本#12

 甘いお菓子がつきもののハロウィンだが、ケーキと幽霊という組み合わせはどうだろう。『The Bake Shop Ghost』は、ケーキ屋さんとそのお店に住む幽霊のお話である。
 コーラ・リー・メリーウェザーは、土地では名の知れたケーキ屋さん。彼女の焼くケーキはスポンジケーキやバタークリームがたっぷりのバースデーケーキをはじめ、州でも1番と言われるほどだった。でも甘いケーキとは裏腹に、コーラの表情には甘さはこれっぽっちも見られない。それでも人々はケーキのすばらしさに引かれ、コーラの不幸せそうな容姿にはまったく気づかなかった。年老いたコーラが亡くなり、お店は売りに出される。買い手はすぐにみつかったものの、やっかいなことが起きた。買い主が店開きをするとコーラの幽霊が現われ、お菓子作りの邪魔をして追い払ってしまうのだ。シュトルーデルがお得意のゲルダ・ステイン、カンノーリ、エクレアを焼くフェデリコ・スピネーリ、マジパン飾りの得意なソフィー・クリストフはみな、幽霊を怖がって次々と出て行った。そこにケーキ作りの若いシェフ、アニー・ワシントンがやってくる。さて、コーラはどうするか。
 お話の状況はハロウィンにぴったりの幽霊話だけど、おいしそうなケーキがたくさん登場するので、ケーキ作りの好きな人にも向く絵本といえそうだ。アニーとコーラのケーキ作りの共演は、ドキドキするほど熱がこもっている。ティラミス、月餅、チョコレートケーキ、フルーツケーキ、スパイスケーキ、チーズケーキ、キャロットケーキ、タルト、バーブカ、ブントケーキ、パウンドケーキなどなど、おいしそうなケーキの名前とイラストが並ぶページは、久しくこのようにデリケートな焼き菓子を食していないわたしにとっては拷問のように感じられた。プライスマンのイラストが洒落ていて、バニラやチョコレートの香りが漂うキッチンのイメージにぴったりである。これは、『アップルパイをつくりましょ―りょこうもいっしょにしちゃいましょ*1でもそうだった。
文章が多いので、小さな子どもより小学生向けかもしれないな。ケーキ作りといっしょに楽しめたら、申し分ないだろう。
 計画としては、ハロウィン当日にパイなり何か焼き菓子を作り、食べる前にこの絵本を読んだらどうかな……と思った。(わたしはアニーやコーラのように、繊細で美味なケーキは作れないけど。)「お菓子だけでも十分なのに、甘いものはもう勘弁して〜」と、主人に言われてしまうかも。巻末に「幽霊をよろこばせるチョコレートケーキ」のレシピがあるので、これかな。(asukab)

The Bake Shop Ghost

The Bake Shop Ghost