米国暮らしの絵本手帖 図書館リオープン

 土曜日の朝、息子といっしょに銀行までバイキング(biking)。帰りは、本日グランド・リオープニング予定の図書館の近くを通った。自転車なら5分、徒歩なら10〜15分という距離に公立図書館があるって、これは非常に恵まれていることじゃないか。今日は正午から市長を迎えての祝賀式典・イベントが予定されている。隣接する公園もいっしょにオープンするから、住民としてこんなに喜ばしいことはない。
 ……で、家族全員でイベントに出かける。公園横ではケイジャン音楽の楽しい調べが流れる中、スターバックスが飲み物とクッキーの無料サービスを行っていた。入り口前には長蛇の列。どこの家も家族ぐるみで来ていて、開館を待ちわびている。「週末の開館時間が延長されるように市議会員に訴えて欲しい」と、図書館関係者が切手の貼られたハガキを配っていた。みんな熱心に説明を聞いているので、図書館をサポートする住民の姿勢に胸が熱くなる。ブルーカラーと移民層中心のコミュニティーだけど、「本」に対する意識は誰だって同じなのだ。
 入館する瞬間はみな、新しい建物の匂いに包まれ嬉しそう。「新しい建物」って、やっぱり特別だ。大事にしなくちゃいけない。市長らのスピーチの間、娘とわたしはアートテーブルに移動し、子どもと親でごった返す中、パーティーハットを2つ作った。わたしはさっそくかぶったのに、娘は恥ずかしがってかぶらない。もったいないなあ、今日は晴れがましい日なんだよ〜。ケイジャン音楽のバンドはずっと演奏を続けていて、娘は随分魅せられた様子。女性ばかり5人のグループで、衣装もカウガール・ブーツにフォークロア調のスカートで南部風だった。地元2高校によるスチールドラム、室内楽演奏もすてきだった。
 これだけ込み合っていても、もちろん絵本書架の確認は怠らない。こんなに借りるつもりはなかったのにお祭り気分に流されて、気がつけば結局絵本10冊が腕の中に。有名作家や文学賞受賞の作品などは1作品につき3〜5冊がぴっかぴかの新しい状態で揃えられていて目を奪われてしまった。ここは市内公立図書館の小さなブランチに過ぎないのに、こんなに贅沢に作品が選べるって……、子どもたちは幸せだなあとしみじみする。
 袋も何も持たずにきてこれだけの荷物を運ぶのはしんどいなあ……とぐったりしていた矢先に気持ちを高めてくれたのは、初体験のチェックアウト・システムだった。他図書館では1冊ずつ自分でバーコードをスキャンしてチェックアウトする作業だったのが、ここではカウンター上に装備された魔法のような黒いパネルの上に本を乗せるだけで済んでしまった。これですべてが同時にスキャンできるのだそうだ。何しろ速い。あっという間のチェックアウトで、狐につままれたようだった。
 シアトルでは98年の投票で図書館リモデルが決議され、ここ数年立て続けに市内のあちこちで図書館施設が新装されている。この一連のオープン行事を象徴する着ぐるみキャラクター(魔法使いのような妖精ルル)もあるくらいで、彼女はケイジャン音楽に乗って新図書館に登場するのだった。うちの場合、この図書館以外にも近距離圏内(車で10分以内)に3図書館があり、感謝の一言に尽きる。そのうち1つは郡立でまったく別のシステムだから、希望書籍はさらに手にしやすい。加えて嬉しいことに、これらはすべて新しい図書館である。つまり、最新テクノロジーを駆使して、図書サービスを提供してくれるのだ。シアトルの場合、個人の貸し出し・図書予約状況をRSSフィードで知らせてもらえるので非常に便利である。郡立のほうは、またこのシステムは導入していない。(asukab)