おじいちゃん、おばあちゃんとの日々

 週末、母から電話があった。船便で送った娘の古着3箱のうち1つが届いたという。うちは、妹も弟も子どもは女の子。なので娘の洋服・おもちゃもろもろは、日本に回している。同時発送しても届くのはバラバラなので、母はいつもながら電話口で気をもんでいた。
 近況を尋ねたところ、孫といっしょの日々を満喫しているとのこと。わたしと違って、妹も弟も田舎に戻り親孝行しているのである。「人生、こんなに楽しいことはない」と父に言わしめたほどの2人の姫たち(2歳と0歳)は、老夫婦の暮らしを明るく彩ってくれた。孫って、自分の子どもより可愛いのだそうだ。へえ〜、そんなことあり得るのだろうか。顔をつねっても体をよじってもぴんとこないが、きっと自分も20年後ぐらいにはそうもらしながら孫の存在を生きがいにしているのかも。本当ならわたしもこの手の喜びをプレゼントしたかった。でも、今は姪っ子たちに活躍してもらおう。
 そういえば『The Hello, Goodbye Window (Boston Globe-Horn Book Honors (Awards))』(邦訳『こんにちは さようならのまど』)を読んだときにも、同じような気持ちを抱いたんだ。絵本には老夫婦と小さな孫娘の温かい交流が、彼女のあどけない語りを通して描かれる。「こんにちは、さようならのまど」とは、おじいちゃんとおばあちゃんの家のキッチンの窓。祖父母の家に遊びに行くとき、コミュニケーションはいつもこの窓から始まる。女の子がガラスに顔を押し付けておもしろい顔をすることがあれば、おじいちゃんやおばあちゃんが手を振ったり、いないいないばーをしたり。陽の当たるキッチンはとても広いので、お絵かきするのも、遊ぶのもいつもここ。赤ちゃんの頃、キッチンの流し場をお風呂にしてお湯に浸かったことをおばあちゃんが話してくれたりする。(流しをお風呂として使うことはわたしもそうだったので、息子に話すと目を丸くしていた。)
 お話は、老夫婦の家で過ごす普通の日常を、普通に伝えるだけである。それがたまらなく愛しい。ハーモニカを吹くおじいちゃん、花の手入れをするおばあちゃん。いっしょに過ごす時間はゆっくりと流れ、かけがえのない思い出に変わっていく。何気ない日常が1番の幸せなんだよね。明るいパステル画が、このメッセージをさらに優しく伝える。
 両親の笑顔が、ぽっと浮かぶ。こういうひとときをプレゼントすることが、人生最高の贈り物なのだろう。(asukab)

The Hello, Goodbye Window (Boston Globe-Horn Book Honors (Awards))

The Hello, Goodbye Window (Boston Globe-Horn Book Honors (Awards))