犬好きはくすくす笑ってしまいそう

 最近読んだ絵本で、息子と娘2人をとりこにした作品にもう1冊『The Great Fuzz Frenzy』があった。この大判絵本は書店で手にして「動物好きで漫画・アニメ好きの小学生の間で人気の出そうな絵本〜」という印象を持ったのだが、あながち外れていないと思う。登場する動物たちの目の中にキラリと光る「星」というか白い「点」があるので、キャラクターの描かれ方が日本の正統派少女漫画の抒情性をたたえているという感じ。目に甘い表情があり、そんな顔つきで動き回る彼らの姿を追えば、大草原で起きたできごとにあっという間に引き込まれてしまう。
 作者たちは姉妹である。愛犬バイオレットがプレーリー・ドッグの住む穴にテニスボールを入れてしまったことから、2人でイマジネーションを膨らませ、その後日談を考えたそうだ。地中深くテニスボールが転がり落ちる様子は、折り込まれた右ページを開きさらに縦長にしてプレーリー・ドッグたちの暮らしぶりといっしょに描かれる。ここが可愛いくて非常に愉快。1匹が爪にひっかかったボールの毛を頭に乗せると、みんなわれもわれもと「ふわふわ」した毛を欲しがって大騒ぎ。帽子にしたり、うさぎの耳みたいに飾ったり、マントにしたり、首飾りにしたり……。毛を身につけて喜んでいるうちはよかったけれど、次第に喜びはもっと欲しいという欲に変わり、ついには争いに発展してしまう……。
 1個のテニスボールが巻き起こした喜怒哀楽は、大草原に住むプレーリー・ドッグの日常を鮮やかに想起させてくれるので不思議。別に彼らの生活を見たことがあるわけじゃないのに、何だか生き生きと思い浮かべることができるのである。丁寧に描かれたイラストや彼らのワイワイ、ガヤガヤとした会話が、フィクションなのだが臨場感たっぷりの情景を演出しているのだと思う。蛍光付いたボールの黄色は地中に映えて、プレーリー・ドッグたちの興奮ぶりをうまく伝えている。構図のとり方もいい。娘は1匹1匹の表情に魅せられ、息子はボールが落ちてきたという設定に想像を掻きたてられたようだった。うん、確かに子どもの喜びそうな動物騒動物語に仕上がっている。見返しのイラストにも注目を。
 プレーリー・ドッグは、北米中西部の草原地帯(プレーリー)に生息するリス科の動物で、立ち上がって見張りをしたり、犬のようにキャンキャンと鳴く。「キャンキャン鳴く」というのは、実は知らなかった。テニスボールを目にしたときは、「キャンキャンキャン」とさぞかし騒いだのだろう。(asukab)

The Great Fuzz Frenzy

The Great Fuzz Frenzy