ゾウのホートンに捧げる絵本

 ポラッコの最新作『Emma Kate』は作者サイトでイラストを目にして以来、娘が喜びそう〜と、ずっと楽しみにしていた。絵本には、女の子とゾウのふれあいが描かれる。
 どでかいゾウさんといっしょに学校にいったり、遊んだり、生活をともにするなんて、子どもの夢の中の夢じゃないか。彼女たちは仲がよすぎたためにいっしょに扁桃腺を腫らし、手術をして、術後にピンクのアイスクリームを食べる体験も共有する。ここは冷たいアイスクリームの感触とファンタジー、現実が交じり合い、元気な場面とは違った心地よさを提供してくれるところかな。
 とにかく、でっぷり、たっぷりのゾウのサイズがたまらなく頼もしい。それで自転車や自動車に乗ったりするから、おかしさもにじみ出ている。ポラッコによると子どもの頃、スースのホートン*1に夢中になった経験が、本作品誕生のきっかけになったということだった。この大きさは、ホートンの温かいハートの大きさでもあるのだ。
 読み始めてすぐの娘の反応が、「エマ・ケイトって誰?」。うふふ、これは最後までお楽しみということで曖昧にしておいたのだけど、読み終わっても「エマ・ケイトって誰かなあ?」と不思議がっていたので、絵本の力が伝わったらしい。
 鉛筆で力強く描かれるイラストには、象徴的な彩色のみしかなされない。ポラッコと思われる女の子(ドレス、靴、靴下、リボン)以外、白黒のままで残されるページが多いので描画の素朴さと赤の躍動が同時に味わえる。
 人を包み込む「大きさ」の質感がそのまま伝わり、安堵感に浸れる絵本である。(asukab)

  • ベア・ハグならぬ、エレファント・ハグ

Emma Kate

Emma Kate