うさぎ社会で絶賛の「オオカミ入門書」

 うさぎのG・ラビットはウェストバックス・ウサギアナ図書館から、新刊『Wolves』(エミリー・グラララビット著)を借りた。おおかみの習性・実態を伝える本は、「ウサギ穴に一冊」(デイリー・キャロット紙)、「結末が刺激的」(ヘアラルド紙)、「オオカミの危険性を若いうさぎたちに伝える格好の入門書」(ラビット・レビュー誌)などなど新聞・雑誌が絶賛する話題の新作である。図書館からの帰り道にページを開けば、どう猛なオオカミたちがそこから飛び出してきそうな顔つきで迫ってきた……。
 巧みに趣旨が練られた芸術的作品だ。作中話と現実が交錯するスリル、リアルさ、アートの美しさが売り。「らしく」見せるための仕掛けが心憎い。ウサギアナ図書館から絵本を借りたのは、G・ラビットであり、読者自身でもある。あちらこちらに登場するウサギにまつわる洒落が、G・ラビットの暮らしぶりを伝える設定――ドアマット、広告、手紙、図書館の貸し出しカード、期限切れのお知らせなど――と合わせて、英国の絵本らしい遊び心を提供する。小さな子どもには少々残酷なのかもしれないが、自然の摂理を理解する子どもたちならこの旨味がわかるだろう。息子といっしょに何度もページを開いた。主人も感心していた。この味わい深さは、英国そのもの。 
 さて、明日土曜日は、息子たちのオーケストラが主催するシンポジウムの日。市内他中学のオーケストラと合同の発表会+ワークショップが企画されている。焼き菓子セールのボランティアに申し込んだのでショートブレッドでも焼こうかなと思っていたところ、息子が張り切って彼自身のレシピによる「にんじん&バナナ&マンゴジュースのオーガニックマフィン」を焼いてくれた。1番大きいマフィンは、先生へのプレゼント用。うれしそうに粉をまぜ、型に生地を流し入れる姿を見ていたら、この子は幸せな大人になるのだと自然に納得できた。「食」を大切にする人は誰でも、人生半分の幸せが保証されているのと違うかな。
 彼がマフィンを焼く間、この「オオカミ入門」の絵本についてみんなで盛り上がる。もう少し大きくなったら、娘も洒落の部分など楽しむことができるかな。(asukab)

  • 表紙カバーを取り除くと、作中の本と同じ体裁になる

Wolves

Wolves