イーグルボーイの心

 突然仕事が入り、忙しくなる。こういうときは、ゆっくり絵本が読めないので残念。ところがこの仕事で偶然、シアトルの歴史を振り返る機会が与えられた。北西部先住民とヨーロッパ系移民者たちの土地抗争について資料を読み、当地の変遷ぶりに想いを寄せる。
 シアトル地域の先住民たちは自然の恵みに囲まれ、豊かな暮らしを営んでいた。まずはなんと言っても漁業。この鮭に加え、森では木の実、果物がたくさん採れた。トーテムポールは、彼らの暮らしぶり・思想をみごとに象徴する。
 『Eagle Boy: A Pacific Northwest Native Tale』は、当地に伝わる民話である。主人公の少年は孤児。ワシの集団と気持ちを通わせることができた。ところが、村人たちは鮭を獲物とするワシを嫌っていた。同様に、ワシと仲のいい少年のことも嫌っていた。不漁が続き食料不足が深刻になってきたある日、首長は新天地を目指して島を後にすることを決意する。村人たちは少年を島に置き去りにして、島から離れて行った。島に残されたのは、イーグルボーイひとり。(……何と言う冷酷な行為。)
 ストーリーには、当地の美しい自然がたっぷり描かれる。イーグルは、このあたりでは子どもたちに人気の鳥。空に輪を描く孤高の姿を指差して、静かに見入っている子どもの姿をよく見かける。悠然とした気高さに引かれるんだろうな。地に足を置く人間の憧れであることは自然に納得がいく。去年、小学校に劇団がきたとき、演じたお話のひとつがこのイーグルボーイだった。(asukab)

  • 地元のお話っていいな、と実感

Eagle Boy: A Pacific Northwest Native Tale

Eagle Boy: A Pacific Northwest Native Tale