美しくて怖い森でのお話

 収穫感謝を飛び越して話題をアドベント、クリスマスに向けるのは気が引けるけれど、お菓子の家がのぞく表紙を見たら、これは絶対ジンジャーブレッド・ハウス(実は、グラハム・クラッカー使用)を作る前に読まなくちゃ……ということになり娘といっしょに『Hansel and Gretel』を読んだ。12月に入ってしまうと忙しくて、読み忘れの可能性大とも思えたので。
 ホットケーキとビスケットの屋根、白パンの壁、ドロップの窓、キャンディー・ケーンのドア――夢のような甘いお菓子の家とは対照的に、お話は怖くて暗い。母親と老婆の醜悪ぶりからは、昔の日々のあり方を想像させてもらった。生き残ることが1番という原始的社会では、こういう人たちって、たくさんいたのだろう。こと細かく法律で規制されるわけでもないし、とくに深い森などに住んでいれば、何をしたってわからないもの。人と触れない分、自分勝手な価値観で生きていくことが可能だったということか。娘は老婆(魔女)の陰湿な顔をじっと見つめていた。
 宗教画を想起させるイラストは、それはため息もの。けなげな2人とやさしい父親のハッピーエンドにほっとする。(asukab)

Hansel and Gretel

Hansel and Gretel