冬の魔法はトムテから

 今朝は霜が降り、あたり一面真っ白の光景。娘はサンタ帽をかぶり登校した。途中には、だいぶ踏みならされてけれど氷も張っている。たぶん、朝一番に喜んでこの氷を割ったのは息子だろう。出掛けに部屋に戻り、白み始めた金色の空と有明の月を指差して「ママ、きれいなものがあるよ」と教えてくれた。落としたら澄んだ音をたてそうな三日月は、まるでガラスの上に描かれた絵のよう。詩情いっぱいの空を仰いで登校とは、午前7時発早朝スクールバスのおかげかな。さて、娘は娘で砂糖菓子に包まれたような半透明の景色を見てはしゃぎ。夕べちょうど『The Tomten』(邦訳『トムテ』)を読んだので、何だかぴったりのタイミングだった。
 トムテとは、北欧に伝わる小人のこと。農家の家畜小屋に住んでいて、家を守ってくれると信じられている。クリスマス・イブにはライスプディングをお皿に乗せて出しておき――ここは、サンタクロースとクッキーの関係に似ていてほほえましい――、翌朝それが無くなっていると良い新年を迎えられるのだそう。絵本では奇しくも赤い帽子に白いおひげのいでたちだから、娘が「トムテンって、サンタさん?」と尋ねてきた。(スウェーデン語だと「トムテ」の発音なのかな。英語は「The Tomten」だから、わたしたちはそのまま「トムテン」と読む。ついでに、赤い帽子をかぶった娘を「トムテンちゃん」と呼ぶことに。)
 凍てついた冬の夜に家畜たちに声をかけるトムテの、なんとかわいらしいこと。かわいらしいといっても、もう何百回も冬を過ごしているおじいさんなのだけれど。彼は動物や子どもたちにしかわからないトムテ語で、夢のようなささやきをプレゼントしていく。
 透き通った静寂に包まれるお話は、もともとは詩。だから小さなつぶやきのようでもあり、冬の清らかさにそのまま溶け込める絵本だった。
 今朝、子どもたちが喜んだ冬の姿はトムテからの贈り物のようにも思えた。(asukab)

  • たぶん品切れの日本語版

トムテ

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