満ちたりた冬じたく

 子どもたちの大好きな『クレメンタインの冬じたく』を読む。ねこのクレメンタインはおしゃれさん。クロゼットの中には、「スパッツ43本、シャツ20枚、ジャンパースカート16着、セーター16枚、くつ下116足、ネックレス50本、ブーツ67足、コート12着、マフラー28本、帽子36個、手ぶくろ126組」――。何を着ようかしら……と思いを巡らす姿には、女の子のおしゃれ心が密かに描かれる。淡い鉛筆画がほんのりと、うれしい思案を打ち明けているようでもある。
 女の子の向けかなと思いきや、息子も心行くまで入り込んだ絵本だった。右ページがお洋服・小物の紹介ページ――まるで、ワードローブ図鑑――になっていて、子どもたちはクレメンタインの選ぶものを当てたり、自分が着たいものをうれしそうに指差していく。娘と好きな服の教え合いっこをしていたら息子がやってきて、自分の着たいもの、ママに着せたいもの、果てはダディにに着せたいものまで選んでくれた。お洋服選びを通して「選択の魔法」にかかっていたんだね。冬じたくの充足感もいっぱいに広がって。みんなが大好きな理由は、きっとこの2つの満ちたりた気持ちに浸れるから。こういう絵本は、さりげなく宝物になる。
 スポーンは最近作風が変わってしまったので、他人ごとながら心配してしまう。クレメンタイン以上におしゃれなルースの焼き菓子屋さん(彼女はなんと!タコ。なんて斬新な発想!)を描いた『Ruth's Baker Shop』でファンになったので、デビュー当時からの控えめでやさしい鉛筆画はずっと続けて欲しいなと希望する。(asukab)

クレメンタインの冬じたく

クレメンタインの冬じたく