おせちは真夜中のキッチンで

 新年、明けましておめでとうございます。
 2005年大晦日の午後11時59分50秒あたり。おせち準備の手を休め、息子といっしょにテレビでスペースニードルのカウントダウン新年花火を見ることにした。主人と娘は、すでに就寝。「10、9、8、7……」と数字が小さくなるごと、スペースニードルの下方からタワーを上るようにして等間隔に発火された花火が光る。大事な瞬間はもちろん1番上で「ド〜ン!」「A Happy New Year〜!」。
 その後、約6分間、それは夢見心地のすてきな花火ショーを見せてもらう。シアトルらしい、グランジなどのロック音楽に乗ったカラフルでアーティスティックなショーに感動だった。なんというか、ただ普通にドーンと上げてピカピカピカと閃光の飛ぶ花火ではない、音楽と色彩を生かした非常に芸術的なショーなのだ。それも自分の花火のイメージからは程遠い、洗練された洒脱さをアピールするアートショー。1番好きだったのは、地上から平行にスペースニードルのタワーそのものから横に打ち出された光の水玉。ピンク、オレンジ、黄色の水玉がとてもしゃれていた。次は、虹色の花火。これもタワーの段々を利用し7色が時間差で発光して異次元空間にでも迷い込んだかのような鮮やかさだった。
 西海岸他都市(サンフランシスコ、ラスベガス)の花火も紹介していたが、(たぶん、全部見ていないからということもあるけれど)シアトルがダントツでユニーク。芸術的だった。興奮して繰り返し息子に話すと「他の街は、ただクラシックなスタイルを選んだだけでしょ」と、かなりあっさり切り返される。でもママにしてみたら、何だかすてきなお年玉をいただいたような気持ちだったんだよ。
 というわけで、その後、息子が就寝。わたしは矢羽根蓮根を煮るため、再びキッチンへ。本来なら、大晦日の定番絵本『かさじぞう』を読みのんびりと過ごしているはずが、思いのほか掃除に時間をとられ黒豆以外の準備は夕食後というあわただしい夜になってしまった。でも、煮物、数の子、田づくり、水引なますは時間がかからないし、まあ何とか午前1時あたりに終了。この間、思い出していた絵本は、『まよなかのだいどころ』。男の子ミッキーはパン作り、わたしはおせち作りで充足感を味わうのだ。静まり返ったキッチンでルーズベルト・ジャズをBGMに、コトコト、シューシューというお鍋の音を聞いていると、しんと気持ちが落ち着いてくる。「何だか、いいにおいがするよ〜」と息子が起きてきたけれど、明日のお楽しみ。でも、子どもっておもちばかりほおばっていて、おせちにはあまり箸を伸ばさないんだよね。大人ばかりが食べている感じなんだな、いつも。
 何はともあれ、真夜中のキッチンとアート花火で2006年の幕が開ける。本年も、どうぞよろしくお願いいたします。(asukab)

まよなかのだいどころ

まよなかのだいどころ