りんごちゃんとおばけリンゴを読む

 娘の散髪。肩まで伸びていたのでショート・ボブにする。絹糸のようなサラサラの髪で、はさみを入れる音もサクサクとごきげん。赤いほっぺたに丸顔が映え、見るからに「りんごちゃん」になった。娘のニックネームには「ほっぺちゃん」「おもちちゃん」などあるのだが、新しくりんごちゃんを加える。
 そこで読んだ絵本が『おばけリンゴ (世界傑作絵本シリーズ)』。貧しいワルターが願って育てたたったひとつのリンゴは、見たこともない大きなおばけリンゴ。幸せを手に入れたと思ったのもつかの間、リンゴはなかなか売れずワルターは悲しい思いをする……。
 息子と読んだときも感じたけれど、何だか変わったお話である。展開が突拍子もなくて、少なくとも米国ではお目にかかれない絵本。ところが、子どもは好きなのである。赤が印象に残るイラストにも感動しているし。理路整然としない発想が子どもの世界そのもので、親近感が湧くのかもしれない。おばけリンゴというタイトルにまず引きつけられるし、後で登場するドラゴン、秘密警察の存在もおもしろいんだろうなあ。人間の悲哀と武勇ものがドッキングして、めでたしめでたしだった。娘はずっとリンゴの行方を気にしていた。理に勝って非に落ちるの逆になる絵本かな。(asukab)

  • 邦訳の表紙と異なるけれど、書影がなかったのでドイツ語版で。邦訳はフランス語版(『Le Petit Homme a la Pomme』)の表紙と同じ。

Das Apfelmaennchen

Das Apfelmaennchen