数のアート

 意識してか無意識なのか、娘のリクエストは日本語の少ない絵本ばかり。『One To Ten Pop-Up Surprises!』は、1から10の数が動物などで紹介されるポップアップ絵本である。でも、文字はまったくなく、出てくるのは数字とイラストのみ。どちらかというとアートブックの趣向なので、本棚からうれしそうに引っ張り出してきたときは思わず「別の本にしようよ」と言いかけてしまったのだが、いっしょに開いてみて数字は侮れないことを思い知らされた。
 無駄のないデザインは、シンプルで美しい。ページを開けば一面に黒か白で大きく数字が現れる。この数字をめくったり、引っ張ったりすると下(隠れて後ろになった部分)からいろいろな対象物が飛び出す仕掛けで、モノクロームにカラーの映える変化が印象に残る。なので見て楽しむ絵本とずっと思っていたのだけれど、これを日本語で読むと、というか説明すると、数詞の知識があいまいな娘にぴったりではないか!とちょっと感動――。ただ「かえるが1匹」「オオハシが2羽」……と読んだだけなのだが、同時に親のわたしが日本語の奥の深さを思い知らされたというか、白黒からカラーの世界に引き戻された。日本語って、数にもこんな色があったんだ。数詞を追うだけで、粋な日本文化とご対面。数のアート、ここにありという感じかな。生活の中で親しむしかないけれど、娘にはたくさん、こういう言葉に慣れて欲しいなと思った。
 金曜日には、キング牧師をたたえる全校集会があった。「I Have a Dream」のビデオは見るたびに泣けてしまうので娘を送った後すぐ家に帰ろうとすると、同じクラスの保護者から「せっかく詩の暗唱*1をするのだから、見ていったら」と誘われる。……やっぱり涙が止まらない状態に。子どもたちが黒人国歌の包容力のあるメロディーを口ずさむと、またぐっと胸に迫る。「I have a dream. I HAVE A DREAM.……Let freedom ring! LET FREEDOM RING!」――最後に全校でスピーチの一部を復唱して閉会。こうして毎年この日を覚えることで、安全な社会を作る大切さが確認できる。(asukab)

One To Ten Pop-Up Surprises!

One To Ten Pop-Up Surprises!