千一夜物語子ども版とソマリアの少年

 『Mouse Soup (I Can Read Level 2)』(邦訳『おはなしばんざい (ミセスこどもの本)』)は、イタチに捕まりスープにさせられそうになるねずみが一計を案じて語るお話集。「お話をスープに入れるとおいしくなるよ」と4つのお話を語り始める。
 かえるくんとがまくんシリーズ以外のローベル作品を、と思い選んでみたところ、内容も言葉のレベルも娘にぴったりでイラストを堪能しながらうれしそうに読んでくれた。「Reading is fun!」と子どもにいわしめる本って、すごいなと思う。小学1年生の読書を喜びで満たすシリーズは、かけがえのない宝物。作者に心から敬意を表したい。
 1年生といえば、娘のクラスにすばらしい男の子がいる。ソマリアから移民してきた彼は、幼稚園から娘といっしょのクラス。昨年、ESLの言語習得アセスメントテストを受けていたと思ったのに、今年は1年生入学の時点ですでに2年生の読みレベルと判断された。現在チャプターブックを飛び越して、中・高学年の子どもたちが楽しんでいるようなペーパーバック――たとえば、『Magic Tree House Collection: Books 1-8: Dinosaurs Before Dark, The Knight at Dawn, Mummies in the Morning, Pirates Past Noon, Night of the Ninjas, Afternoon on the Amazon, and more! (Magic Tree House (R))』の1冊など――を読んでいて、これを目撃したときは目を疑ってしまった。読めても内容理解のできていないケースがよくあるのだけれど、彼の場合コンプリヘンションも完璧。先生との口頭試問に耳を傾けると、あまりの的確さにただただ感心するばかりだ。知らないことをしっかり質問する知識欲旺盛な姿勢もプラスに作用しているんだろう。昨年、幼稚園の先生が「彼の語彙力は、宗教(イスラム教)の影響」と話していたことを思い出した。発表なども上手なんだなあ。彼を見ていると、天性の才能とはこのことを指すのだと納得できる。兄弟は10人近くいて、お母さんはわたしよりも一回り以上年上の方。こちらの生活に慣れるだけで大変なのに頭が下がった。環境に恵まれていたり、小さな頃からお勉強頑張っているんだなと感じさせる子どもたちはよくいるけれど、彼のような天才には初めて出会った。明るい笑顔が、アフリカの大平原を照らす太陽のように思える。(asukab)

  • 邦訳タイトル(『おはなしばんざい』)がかわいくて感激

Mouse Soup (I Can Read Level 2)

Mouse Soup (I Can Read Level 2)