おちゃめな姉妹のバレンタイン・ストーリー

 バレンタインにかわいい絵本に出会った。ドローレス・シリーズ6冊目の『Happy Valentine's Day, Dolores』である。
 大好きなフェイおねえちゃんの部屋に忍び込み、遊びたいドローレス。入っちゃだめ!と言われているにもかかわらず、そうっと部屋をのぞくと、おねえちゃんがすてきな小箱を引き出しに隠していた。小箱が気になって仕方がないドローレスは、誰もいないのを見計らってこっそり引き出しを開けてしまう。手にした小さな赤いハート型小箱を開けると、「アイ・ラブ・ユー、ゲロゲロ〜」と歌うかえるのネックレスが入っていた。なんて、かわいいの! 誰からもらったのか、誰に贈るのか、憶測が飛び交う中、ある日の放課後、ドローレスは再び引き出しを開け、ネックレスを首にかけてみる。ところが、留め金の扱いが結構たいへんで、そうこうしているうちにおねえちゃんが帰ってきた。どうしよう、はずせない! 猫のダンカンを首に巻いたり、マフラーをしたりでなんとか隠すことができたけれど……。
 姉妹のやりとりがリアルで、こういう状況ってあるだろうなあと、娘もわたしも「かえるのネックレス事件」にどんどん引き込まれていった。本シリーズの特徴は、彼女たちが年を追うごとに成長しているという点。この現実感が、生き生きとしたキャラクター像を作り出していると思う。姉妹にしても、ダンカンにしてもキャラクター描写が非常に魅力的である。10代になりたてのちょっと背伸びしたい心意気が軽やかに活写され、作者の人間観察に脱帽だった。ジェニー・B・ジョーンズの従兄弟版と呼ばれているのも納得。笑える展開と親しみのあるイラストが阿吽の呼吸で、これもいい。帰結が心あたたまり、バレンタインにぴったり。チョコレートばかりがバレンタインじゃないよ、と教えてあげたいな。
 わたしにも妹がいたけれど、年が離れていたからか、こういう弾ける年頃の楽しい関係は味わえなかったなあなどと思い起こす。(asukab)

Happy Valentine's Day, Dolores

Happy Valentine's Day, Dolores