ロベルト・クレメンテの生涯

 打ってよし、走ってよし、守ってよし。『Roberto Clemente: Pride of the Pittsburgh Pirates』は、スポーツ・ノンフィクション絵本。オールラウンドプレイヤーと知られ、MLBナ・リーグの最下位チーム、ピッツバーグ・パイレーツをワールド・シリーズ優勝に導いたプエルトリコ出身のスーパースター、ロベルト・クレメンテ選手(1934-1972年)をたたえる秀作だ。すばらしい成績を残しても米国人記者に見下げられたりと、華々しい活躍の陰に苦渋の日々のあったこともつづられる。ニカラグア地震被害救済のため、食料、生活物資を空輸する途中、飛行機事故で亡くなった生涯は人道主義の模範となった。MLBは1973年、地域貢献、慈善活動に功績を残した選手に与えるロベルト・クレメンテ賞を設立し、現在に至っている。
 1971年ワールド・シリーズMVP選手(打率4割1分4厘)が、3千本安打の偉業を成し遂げた翌年1972年の12月31日夜、飛行機事故で他界した事実は衝撃以外のなにものでもない。でも、それだけに彼が後世に残した意義も大きい。
 イラストが美しかったので、思わず手にした作品。カラーとペン画のコントラストが、スポーツのスピードとパッションを効果的に描き出す。
 情熱的、人道的な野球人の生き方に胸を打たれた。事実は知っていたけれど、こうやって絵本で読むとさらに。(asukab)

Roberto Clemente: Pride of the Pittsburgh Pirates

Roberto Clemente: Pride of the Pittsburgh Pirates