1ねんに365のたんじょう日プレゼントをもらったベンジャミンのおはなし

 息子の誕生日に読もうと思っていたのにタイミングを逃してしまった『Benjamin's 365 Birthdays』(邦訳『1ねんに 365のたんじょう日プレゼントをもらったベンジャミンのおはなし (世界の絵本)』)を読む。
 9歳のお誕生パーティを開いた犬のベンジャミンはその晩、楽しかったひとときを思い返す。そうしているうちに、急に悲しくなってきた。プレゼントを開く瞬間のときめきが、10歳のお誕生日まで味わえないのかと思うと寂しくてしかたない。そこで贈られたプレゼントを包みなおして毎朝開き、喜びを再現することにした。でも、それも数が限られているためすぐに終ってしまう。それなら……と、その後毎日、家にあるものをひとつずつ包み、毎朝開くことにした。365日の間、包みを開いて感動を味わったベンジャミンは、10歳のお誕生パーティを開く。
 与えられることに喜びを感じたベンジャミン、マテリアリズムに埋まったベンジャミン……描かれているのはそんな姿。9歳だから子どもなのだろうと決め付けていたけれど、読み終え、ベンジャミンを見入ると9歳というのは犬年齢の9歳かもしれないと思えてきた。ひとり暮らしだし、何よりこういう大人って、いそうだもの。誇らしげに10歳のお誕生日を祝ったベンジャミンは大人に見えた。つまり、物ではない「もの」に満たされて初めて大人になると言える、ということか。大人というより、「魅力ある人生を送る」のほうが適しているかな。
 どれだけ恵まれた日々を過ごしているかわかることが成長の証ということなのだろうが、それにしても、ベンジャミンって子ども? それとも大人? 不思議な読後感である。(asukab)

  • 原書も邦訳も品切れで残念。書影は学校図書用で

Benjamin's 365 Birthdays

Benjamin's 365 Birthdays