こっちにおいで デイジー!

 『Come On, Daisy!』のデイジーは、息子が小さな頃からよく目にしていた。今『こっちにおいでデイジー! (評論社の児童図書館・絵本の部屋)』を読んでみて、長く親しまれる秘密の詰まった絵本だなと改めて納得した。身近な動物あひる、親子の姿、友だちとの戯れ、自然、擬音語、ハラハラドキドキの場面、大胆な構図での演出、間、最後の安堵感――。いずれかひとつが欠けても、このお話は成り立たなかった。デイジーのあどけない表情が、シリーズ化された理由そのものである。
 「ママの そばに いるのよ」と言われても、小さなあひるのデイジーは上の空。まわりの小動物たちに気がとられ、ママの言うことが耳に入らない。そうしているうちに、デイジーはいつの間にかママとはぐれてしまう。
 デイジーの行動はまさに小さな子どもの行動そのもの。親子で読めば2人でどっぷり共感に浸れるというものだ。こういう時代はあっという間に過ぎてしまうので、大事に大事に過ごしたい。
 あしのしげみから初夏の風がわたるイラストがさわやかなので、春から夏にかけて読むのがぴったりだ。イラスト中のトンボを見て、子ども服の春物コレクションにあしらわれていたトンボの模様を思い出した。トンボは日本だと運動会の頃という秋のイメージがあったので、ちょっと意外だったのである。(asukab)

こっちにおいでデイジー! (評論社の児童図書館・絵本の部屋)

こっちにおいでデイジー! (評論社の児童図書館・絵本の部屋)