チャボのオッカサン

 心内にあれば色外にあらわる(大学)――。『チャボのオッカサン (評論社の児童図書館・絵本の部屋)』の表紙を見せたら、自分も子どもなのに「ええ〜、なんだか子どもっぽそう」という顔をした息子。ところがどっこい存外に楽しんだ絵本になる。ふっと引き込まれる秘密がたくさん詰まっているのだ。タイトルから察せられるように、作品は非常にユニーク。でも、同時に一家族とチャボの交流を描く心あたたまるストーリーでもあった。
 湖で何かがおぼれている。ケティのおとうさんが助けた動物は、チャボ。家で介抱してあげるとすっかりなつき、犬のブルーノのバスケットを寝床に陣取ってしまった。チャボは湖の向こうの農場から来たのだろうと、一家はチャボを農場へ返しに行く。ところがチャボは毎朝ケティの家にやってきて、バスケットの中にたまごを1個産み落とすことを習慣にしてしまった。そうこうしているうちに、ケティの家のすてきなできごとが起こり……。
 まず、ケティの一家がしびれるほどいかしている。おとうさんはピアスにポニーテール、アイビー帽といういでたちで、1歳半ぐらいのケティを背中にしょっている。おかあさんは赤毛のベリーショートでなんだかパンクっぽい。それでいてこの若夫婦は礼節をわきまえ心優しいのである。
 郊外に住むロンドン風一家がチャボと過ごす時間は、ときにコマ割りコミック調、ときに一面クローズアップで描かれ、ストーリーラインの起伏に合わせて流れるように過ぎていく。「ふつうなら おはなしは これで おしまい……でも、おわらなかったんです!」と続いていくお話に、次は何が起こるのかなと知らないうちに引き込まれてしまうのである。最後にお姉さんになったケティがいるので、連続ドラマの設定でもあるのだ。つまり、物語として読ませる魅力が十分備わっているから、息子も楽しめたのかな。
 で、冒頭の格言に戻ると、読後、息子の顔には「なかなかいけるじゃん」の表情が。裏表紙見返しまで楽しむことが大切。原書『Queenie The Bantam』のqueenieをオッカサンとした邦訳に、あっぱれ!だった。(asukab)
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チャボのオッカサン (評論社の児童図書館・絵本の部屋)

チャボのオッカサン (評論社の児童図書館・絵本の部屋)