悲しい本

 息子が生まれ親になったばかりの頃、主人とよく確かめ合っていた。「子どもを失うことは最悪の事態。絶対に起きて欲しくない」――その悪夢を、1人の男が体験した。最愛の息子を失ったこと。この現実に直面し、彼は胸の痛みを包み隠さず言葉に表出した。『悲しい本 (あかね・新えほんシリーズ)』には家族とともに流れた時間以上の追憶が、光と陰、そして風となって描かれる。思い出される光景はどれも眩しく、それゆえに辛い。ブレイクのペン画がペーソスを交え、遠い目をした男の日々を綴っていく。
 最後に灯るものは、1本のロウソクだった。暗い冬の夜に明かりを灯し光を求めた民と同じように、男はロウソクの明かりに照らされる。これは、クリスマスの原点だ。静かに揺れる火が、冷え切った心に温もりを与え、希望の光となりますように。そして、平安が訪れますように。(asukab)

悲しい本 (あかね・新えほんシリーズ)

悲しい本 (あかね・新えほんシリーズ)