いつかは きっと

 うららかな春の1日、娘の成長祈願で善光寺大本願に赴く。七五三をこちらで祝えないことから、そのお祝いの意味もあった。わたし、娘、妹、姪、みんな母から着物を着付けてもらう。着物って、気持ちが落ち着いていいな。訪問着も帯も、辻が花を選んだ。幻想的な色合いが大好き。サーモンピンクの着物に薄茶の帯を合わせ、参道をはんなり進む歩調を楽しんだ。娘は、ぽっちゃりした日本人形のよう。お上人さんのありがたいお経を、何もわけが分からずともにこにこして聞いていた。
 そんな娘に贈りたいなと思って購入したのが『いつかはきっと…』。彼女は原書『Someday』に喜ぶのだろうけれど。
 ここには、かわいらしい女の子が「いつかは きっと……」とうれしそうに自分の夢を語る姿がある。たとえば、お兄ちゃんが自分を友だちに紹介してくれるというところ――「ほら うちのちびさ」なんていわずに「ぼくのいもうとです」。あるいは、ピアノのおさらいをしているところで――お向かいのおばさまが「きれいな おと! もういちど きかせてください」などなど。「こうなったらいいな」という希望はどれもとても身近で、たちまち親しみの情が湧いてくる。素直なつぶやきが心を揺さぶるんだろうなあ。終わり方も気が利いていてかわいいのだった。
 娘の1年生入学を前に、こうしなさい、ああしなさい、と厳しく伝える日々が続いており、自分でもうんざり。「いつかはきっと……」と彼女がいつも夢を描けるような日々をプレゼントしなくちゃと思った。
 残念ながら、書影なし。女の子らしいオレンジとピンクの色合いに、この年頃の幸せがいっぱいつまっている。(asukab)