チャーリー・クックのお気に入り絵本

 プレゼントでいただいた絵本『Charlie Cook's Favourite Book』を息子と読む。ドナルドソン&シェフラー制作の絵本といえば、韻を踏んだユーモラスなお話絵本という切り口が定番だ。ご多分に洩れず、本作品も然り。『The Gruffalo (Picture Books)』(邦訳『もりでいちばんつよいのは? (児童図書館・絵本の部屋)』)に見られた軽快なリズムが、子どもを引き込む「からくり」といっしょになり、不思議で楽しい本の世界に誘ってくれた。
 さて、その「からくり」とは? 作中話に出てくる主人公たちがみな本を読んでいるという設定を通し、読者は本から本への数奇な旅を味わっていく。主人公の男の子チャーリー・クックは海賊の本を読んでいる。その本の中で船長が読んでいる本「3匹のくま」に登場するのが金髪の女の子ゴールディロックス。金髪の女の子が読んでいる中世の本に登場するのが騎士。騎士が読んでいるジョーク本に登場するのがレッダロットという蛙。蛙がジャンプして着地した鳥類図鑑に登場するのが……。ページをめくるたび、必然的に視点がどんどん変えられ、次から次へと本の中に入り込むことになる。テンポが変わり、世界が変わるのだから、この刺激はなかなかの魅力だ。
 加えて、出てくる人物や動物たちのユニークなこと。最初はおとぎ話の主人公だけかと思ったけれど、そうじゃない顔ぶれがいかしている。前述のレッダロットという蛙のつづりは「Reddalot」で「read a lot(=たくさん読んだ)」の意味という。息子がこの洒落を教えてくれたときなど、あまりに凝っていて降参の白旗を揚げへなへなへなと座り込んでしまった感じ。押韻とプロットだけでも十分と感じていたから、読書をテーマにした絵本の中では最高峰の1冊だと思った。
 しかも、ゲームと驚くような発見は一読してもまだあった。見返しに見える本棚のイラストには、作中登場した本の背表紙が並ぶ。ここを確認しながら誰がどの本を読んだのか息子と振り返ってみたのだが、これが思い起こすのに結構時間を要して、ちょっとした頭の体操に。次に、冒頭見開きに描かれたチャーリーの部屋を目を凝らして見つめると……「あ!」っとたくさんの発見が待ち受けていた。韻のリズム、ストーリー展開、魅力的な登場人物、楽しい探し物ゲーム――。コンビの最新作には韻だけで終らない遊びがたっぷり詰め込まれていた。
 押韻の文章って、唱える側も気持ちがいいものだ。息子にも朗読してもらったけれど、うれしそうに唱えてくれた。黄金色の絵本のひとときって、こういうことを言うんだろうなあ。上質でぜいたくな時間が流れていたと思う。女王さまの国からやってきた絵本に感謝。(asukab)

Charlie Cook's Favourite Book

Charlie Cook's Favourite Book