ナマケザルの秘密

 『Slow Loris』とは、ナマケザルのこと。ロリス科の霊長類で夜行性、動作が鈍いとあった。ノロマザルともいう。
 動物園に住んでいるこのスロー・ロリスには、誰も知らない秘密があった。実は夜になると性格が変わったようにすばやく行動する。いかしたつば付きハットをかぶり、緑色のネクタイを締め、サングラスをかけて。好きなことに熱中して疲れきった頃、白々と夜が明けてくる。スロー・ロリスはクタクタだ。だから、昼間はのろのろと行動することになる。ところがある日、誰も知らなかった秘密が、動物園中に知れ渡ってしまった。
 アレクシス・ディーコンのデビュー作は、現代の渋いおとぎ話。昼と夜、光と影のイメージを、スロー・ロリスの生態を通してうまく引き出している。画法が多彩で、なかなかの凝りよう。鉛筆画や素描を複写機でコピーし水彩の色が入ったかと思えば、写真とコラージュを駆使するなど、さまざまなアートメディアをミックスさせたモダンな作品である。ユーモラスな動物を写実的な描写でおすましさせるので、わたしはそのギャップに引き込まれてしまう。全体的に影の多いイラストで、大人向きかの印象があるけれど、中程1ページ、扉を開く仕掛けがあり、子どもを意識していることも感じられた。
 ディーコン作品では1番のお気に入り。息子のお気に入りでもある。(asukab)

  • ペーパーバックしか在庫がなかった

Slow Loris

Slow Loris