ハリケーン観測機、出動!

 『Hurricane Hunters!: Riders on the Storm』は、ハリケーン観測機の役割を克明に追うノンフィクション絵本である。今年出版されたばかりの絵本なのにヨレヨレのページが多く、かなりの子どもたちに読まれてきたことが伺えた。でも、読んでみて納得。パステル画のイラストに迫力があるし、内容もわかりやすくてなかなか充実しているのだ。
 フロリダ州マイアミ、国立ハリケーン・センターから暴風雨到来の知らせを受けた観測機(WC-130 Hercules)が、ミシシッピ州ビロクシ、キースラー空軍基地を飛び立つ。同機はハリケーンの中に投下ゾンデを打ち込み、風速、湿度、方向、気温、気圧を観測するのである。
 機内と地上でのできごとを交互に示すイラストは、臨場感にあふれている。暴風雨に備え、家を板で補強したり、遠方に避難したり、このあたりの場面には緊張感が漂う。被害を最少にとどめようと任務に就く乗組員たちの行動がきびきびと描かれ、子どもたちは胸を打つことだろう。冒頭に飛行機の内部図が紹介されているのだが、これも人気絵本の秘密かな。
 あとがきにも情報が満載だった。1943年の初出動以来、6月から11月のハリケーン発生時期が繁忙期となる観測機は、今までに4機の不明事故が記録されている。1956年以来女性名、1979年から男性名が加えられ、ハリケーンは6年ごとに人名を使いまわしているが、1969年のカミーユ、1992年のアンドリューは被害が大きかったため使用禁止になった。昨年のカトリーナ・ハリケーンにも言及され、自然災害は防げないがテクノロジーが被害を最少にとどめることができるとし、同機の存在をクローズアップしていた。
 同じ作者による消防士、沿岸警備隊などを紹介する同系ノンフィクション絵本も評価が高い。社会絵本として花丸。息子も興味津々だった。(asukab)

Hurricane Hunters!: Riders on the Storm

Hurricane Hunters!: Riders on the Storm