egg drop 空を飛んでみたかったたまごのお話

 たまごは空に憧れていた。ふと見上げると目に入る鳥、風船、飛行機、羽虫、ヘリコプターやこうもり、雲……。うらやましくてしかたがない。ひよこたちに囲まれて、めんどり母さんが打ち明ける。「たまごは まだ子どもでね。よく わかっていなかったのよ。おしえようとしたんだけれど、きく耳もたずでしょ。もうちょっと まてばよかったのに」――。『Egg Drop』は、空を夢見た1個のたまごのお話である。
 主人公のたまごは、それとなくハンプティ・ダンプティに見えた。コロン、コロン。どうしても空を飛びたくて、コロンとした体に汗を滴らせながらレンガの塔をてっぺんまで上り詰める。583段もの階段を一歩一歩たどりながら。さあ、夢にまで見た瞬間がやってきた。「ヤッホー! とんでるよー!」――宙に身を任せたたまごの運命や如何に!
 実写たまごをコラージュにしたグレイのデビュー作には、その後の彼女の活躍を暗示するかのような隠し味があちらこちらに潜んでいる。表裏見返しの150個を越えるたまごのイラストから始まって、たまごの夢、めんどり母さんの言葉、事件を取り上げた新聞記事、たまごのその後……、どれもこれも練りに練られた発想とアイデアで、オムレツのようなおいしいにおいを漂わせていた。シュールで、おちゃめで、ユーモアいっぱい。グレイ作品*1*2*3にますます夢中になる。
息子と読んだのだが、わたしひとりが喜びすぎて、「ママ……(まるで目がたまご)」という視線を感じてしまった。(asukab)
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Egg Drop

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