それは ひ・み・つ

 『それは ひ・み・つ (世界の絵本(新))』の主人公は、小さなねずみくんです。ある日、きれいな、真っ赤なりんごを見つけ、「ぼくだけの ひみつに しようっと……」と、こっそり土の中に埋めました。そこに次々と動物たちがやってきて、何を隠したのか尋ねます。ねずみくんは「それは ひ・み・つ」と答えるだけ。でも、そうしている間にもね、ねずみくんの背後ではすてきなことが起こっているのです。
 「ひみつ」という響きは謎めいていて、ときにまじめであったり、ときに喜びであったり、さまざまな顔を持ち合わせます。赤いりんごに心を奪われたねずみくんは、ハッピーなときめきを独り占めにしようとしました。自分だけの密かな楽しみですもの、ね。でも、すてきな秘密なら、知りたくなるのが世の常です。りす、ことり、かめ、はりねずみ、うさぎ、かえる――動物たちは「それ」がいったい何なのか、ねずみくんに聞きました。それでも、ねずみくんは答えないのですが……。うふふ、最後には「ひ・み・つ」をみんなにおすそ分け。かわいらしくて幸せいっぱいのエンディングを迎えます。
 「ひ・み・つ」の「・」がりんごマークになっていたり、「ひ・み・つ」の文字が動物たちの色とおそろいになっていたり、ささやかなドラマにはキュートな演出がたくさん施されています。見返しに広がるりんごの水玉模様を見ているだけで、甘い香りに包まれるようでした。
 真っ赤な表紙、リボンのようなタイトル文字が、「ひ・み・つ」の秘密に誘います。りんごの季節が待ち遠しいですね。(asukab)
  • 裏表紙は、葉っぱの緑色

それは ひ・み・つ (世界の絵本(新))

それは ひ・み・つ (世界の絵本(新))