レイチェルのバラ Rachel's Roses

 ご近所のつるバラに目を奪われました。マジェンタ・ピンクのそのバラは木塀に寄り添い、道行く人々に甘い香りを放ちながら夏の訪れを愉しんでいました。そこで読んだのが、『レイチェルのバラ』です。
 おばあちゃんからピンクのバラの花束をいただき、レイチェルは大喜びでした。ところが、日がたつにつれ茎はうなだれ、花びらは散り、ある日気がついてみると、バラはごみ箱に捨てられていました。お母さんが、片付けたのです。悲しくて大泣きのレイチェルを見るに見かねたお母さんは、バラの苗を買いに行きます。
 バラは秋が植え頃です。この絵本には、心を込めてバラを育てるレイチェルの四季が、美しいパステルで描かれています。バラに魅せられた女の子の気持ちは、きっと誰もが共感できるものでしょう。まっすぐで、健気で。育て方が巻末に記載されている点も、うれしいです。
 娘といっしょに読まずにはいられない作品です。色と香りは、他の何にも代えられないバラの魅力。1冊の絵本とうっとりするバラの芳香が、夏のできごとを予言するかのように心地よい幻影を描いてくれました。(asukab)

レイチェルのバラ

レイチェルのバラ