Hunwick's Egg

 『The Room Of Wonders*1を読んだとき、同様のテーマを扱った絵本としておすすめになっていたのが『Hunwick's Egg』である。こちらも、うなりながら読む。とても、よかった。子どもの本の語り部メム・フォックスの文章が堪能できる上、パメラ・ロフツの鮮やかな色鉛筆画が懐かしのオーストラリアへ誘ってくれ、宝物絵本また見っけ!という気分。土地の自然が豊かに描かれているからこそ、特別な絵本といえる。
 主人公のハンウィックは、オーストラリアに生息するミミナガバンディクートという絶滅寸前の動物。ネズミとウサギの中間のような体裁で、長い耳と尖った鼻を持つ。お話は、ハンウィックが嵐の後、たまごを見つけたところから始まる。これはいったい何のたまご? 想像をめぐらせ、ハンウィックはどんどんたまごに魅せられていく。まわりの動物たち――エミューやハリモグラ、バタンインコなど、こちらもオーストラリア大陸ならではの顔ぶれ!――は、なかなかかえろうとしないたまごに夢中のハンウィックを心配し始める。でも、ハンウィックはとうに知っていたのだ、このたまごは……。
 出版社サイトでの本作品に関するQ&Aが面白かった。結末を明かさないように要約すると……。ハンウィックは何も起こらないと知りつつも、話しかけたり、お世話をしたりで大切にたまごを扱っている。そんなハンウィックとたまごの関係から、読者である子どもたちは何を学べるのか?の問いに対し、メム・フォックスは「何もありません」とあっさり一言。たまごとの関係を日常に生かしたり、あるいは生かさなくても、子どもたちが必要であれば何でも感じるままに感じ取ればいいのだと加え、「絵本の定義」というか、わたしにしてみたら「芸術の定義」をみごとに解説してくださった!
 もともとイースター絵本の執筆を依頼され書き始めたという絵本は、構想から7年を経て出版にこぎつけた。それだけ待っても、十分に意義のある絵本だと思う。出会えてよかった!の一冊。息子といっしょに、ハンウィックのたまごって何なのか、ああだこうだとおしゃべりしたことも楽しかった。(asukab)
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Hunwick's Egg

Hunwick's Egg