たなばた

 知っているはずのお話なのに、読み返してみて新鮮な驚きを体験した『たなばた (こどものとも傑作集)』。透明感あふれる水彩が天の川でのロマンスを淡く描き出し、ぽうっと甘美な思いに浸っていました。
 天の川で水浴びをしていた際、着物を隠され飛べなくなった織り姫を妻にした牛飼い。生まれた2人の子どもと夫を残し、西王母の言いつけで泣く泣く天に戻った織り姫。――天空での逢瀬というイメージが残る七夕に、絵本の主人公たちは新しい側面を見せてくれました。同じ絵本を読んでいたはずなのに、なぜでしょう。今回は自分の母性、女性を通して心が揺すぶられました。子どもを残しての別離は、さぞかし大変なことだったでしょう。残したほうも、残されたほうも。母親を追って天の川に向かった子どもたちの気持ちを考えると、居た堪れません。
 「なつのよぞらに、しろくみえる あまのがわ。その りょうがわに、つよく きらめく ふたつのほしが、うしかいと、おりひめです。そして、うしかいのそばに、ふたつ ならんだ ちいさなほし。あれが、ふたりのこどもたちです。」
 清らかな夫婦と美しい親子の愛情を描く絵本です。(asukab)