THE LAST BADGE

 『The Last Badge』は、ボーイスカウトに所属する男の子にぴったりのお話。ユーモラスな設定と展開に引き付けられ、最後に息子と爆笑した。
 サミュエル・モス少年は、12代目のグリズリー隊隊員。野外・社会奉仕に参加している誇りが、大きなスマイルに表れる。それは、おじいちゃんや父さんらも同じこと。代々の輝かしい活躍ぶりはすべて、家族アルバムに残されていた。このアルバムを見るにはきまりがあった。「アルバムを見るためには、アルバムの中に活躍が収録されなければならない」。こう見えても、サミュエルはがんばり屋さんだ。グリズリー隊のバッジ23個をすでに集め、あとひとつ「月のかえるバッジ」を集めればパーフェクトなのだから。しかも、このバッジは過去誰も手にしたことがないという特別なバッジ。月のかえるを探し出せば、バッジがもらえるのだ。サミュエルはさっそく、30年に一度8月10日の真夜中12時に姿を現すという「月のかえる」の居場所を突き止めようと、図書館に通って調査を始めた。
 米国でいうバッジ集めとは、つまり勲章集めに通じるものなのだろう。息子はそれほどこだわっていないけれど、彼の親友などかなり夢中になっていた。たとえばリトル・リーグ、オールスター戦トーナメントを例にとると、試合ごとに所属チームのバッジを交換するので、勝ち進めば進むほど帽子につける記念バッジが増えていく。確かにバッジが増えたら満たされるだろうが、「名誉」とか「誇り」というたぐいのものは、ほどほどに。ときに、苦痛の糸口になったりする。
 さて、サミュエルは父さんといっしょに月の蛙を探しに出かけたのだが……。このあたりは楽しそうな父子関係が描かれ、ほほえましい。果たして、栄えあるグリズリー隊家族アルバムを見ることができるのか。帰結にオリジナリティーがあり、とっても楽しいお話だった。子ども心で創造した作者の意図が、そのまま理解できた。
 イラストにところどころ(たとえば、スカウトのユニフォームなど)コラージュが施され、リアリティーが感じられた。父がボーイスカウトの指導員をしていたので、このカーキ色ユニフォームは懐かしい。信州は自然がいっぱいなので、アウトドア活動にもってこいだったと今さらながら思い知る。(asukab)
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The Last Badge

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