The serpent came to Gloucester

 『The Serpent Came to Gloucester』は1817年の夏、マサチューセッツ州グロスター沖に現れた大海蛇を巡っての実話を物語詩に仕立てた絵本である。この大海蛇を描いた当時の絵は有名で、息子も知っていたぐらいだった。文献によると、グロスター町民は最初は怖がっていたものの慣れてくると、しなやかな怪物の存在を楽しみはじめる。沖に船を出せば、船の下を泳ぎまわるほどだったという。翌年の夏、再びグロスター沖に戻ってきた大海蛇を心無い人間たちが捕獲しようとした。1818年8月20日、リッチ船長率いる捕獲船が沖に乗り出し、ついに9月6日捕獲に成功したかと思いきや、吊り上げたのは巨大なサバだったとか。こうしたことから大海蛇などいなかったという説が飛び交うようになった。実際のところ、どうなのだろう。当時の資料が残っているので、巻末で作者は「その謎を解くのは、あなたかもしれない」と読者に呼びかけ結んでいる。
 バラード形式の詩が大海に戯れた大海蛇を美しく歌い上げ、切なくもあった。ニューイングランド地方の風景と神秘的な海洋動物の姿が、二百年前のロマンに誘ってくれた。昨年話題に上っていた絵本だったので、遅ればせでも読めてよかった。(asukab)
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  • 写実的で透き通るようなイラストがきれい

The Serpent Came to Gloucester

The Serpent Came to Gloucester