SEA HORSE:The Shyest Fish in the Sea タツノオトシゴ ひっそりくらすなぞの魚

 タツノオトシゴ――なんて不思議な生き物なんだろう。容姿も名前も一度目にしたら忘れられない非日常性を持ち合わせ、一瞬作り物じゃないかと疑ってしまうような存在。謎に包まれた魚――魚なのである!――は、生態もとびきりユニークだ。エリック・カールの『Mister Seahorse』で「赤ちゃんを産むのは、お父さん」という衝撃的な事実を知り、興味を抱かずにはいられなくなった。そして二年後の今夏、『Sea Horse: The Shyest Fish in the Sea』を手にして、静かな海洋生物の実態に迫ることができた。
 「一番遅い魚なんだよ」と教えてくれたのは息子。カモフラージュすることも、雄のおなかにポケットがありそこから赤ちゃんを吐くことも知っていた。その数なんと二百から三百というから驚きである。雌が雄のポケットに卵を産み落とすというのだが、なぜ生物学的な役割がほ乳類などと逆転した「雄」「雌」になるのか。雄、雌はDNAが決定することなのかな。文章がわかりやすいので、低学年の授業に最適だと思った。
 版画のイラストがちょっと和風で、昔の絵本のような懐かしさをかもしている。ところどころ、老舗和菓子屋さんの包装紙みたいな感じかな。最近邦訳『タツノオトシゴ―ひっそりくらすなぞの魚 (児童図書館・絵本の部屋)』が出た。(asukab)
amazon:Chris Butterworth
amazon:John Lawrence

  • 透明シートの仕掛けつき。夢を見ているような海の世界がきれい

Mister Seahorse

Mister Seahorse

  • 明解な文章と美しい版画のノンフィクション絵本

タツノオトシゴ―ひっそりくらすなぞの魚 (児童図書館・絵本の部屋)

タツノオトシゴ―ひっそりくらすなぞの魚 (児童図書館・絵本の部屋)