ちゃんと たべなさい

 デイジーのお豆ぎらいを、お母さんがどう対処したか。親の知恵を描く「好き嫌い絵本」が多い中、『ちゃんとたべなさい (世界の絵本コレクション)』(原書『Eat Your Peas (Daisy Books)』)は視点がとてもユニークだ。「おまめ、だいきらい!」と主張するデイジーに対し、このお母さんはなんと「目標」でなく「えさ」としての交換条件を提示する。それも、次から次へと誘惑のレベルはエスカレートしていくものだから、見ているほうはびっくり。「お豆を食べたら、アイスクリームをあげるから」に始まって、「アイスクリームをスーパーマーケットごと買ってあげるし、ずっと起きていていいし、学校に行かなくてもいいし、……チョコレート工場を十件買ってあげるし……」と考えも及ばない域を通りこし、とにかく留まるところを知らない。エスカレートする「もの」の数に伴い、デイジーの「ハ」の字をひっくり返した眉毛の、「おまめ、だいきらい!」と言い張る顔がどんどん大きくなっていく。その果ては、いかに。
 おもしろかったのは、扱うテーマが「好き嫌い」なのに、実はもう一つ大事なメッセージが描かれている点。デイジーのお豆ぎらいを直す特効薬は、ずばりお母さん自身にあった。つまり「子は親の鏡」。これを解釈して、整理整頓が苦手なのも、好きなことでないと夢中になれないのも、やはり、わたしの影響なのだとじーんと反省する。そうなのよね、わかっているんだけどな、ママも。タイトルは、わたしに向けられた言葉でもある。こんな風に言い直して――「ちゃんと やりなさい」。(asukab)
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ちゃんとたべなさい (世界の絵本コレクション)

ちゃんとたべなさい (世界の絵本コレクション)