Flotsam SF、ミステリー、ファンタジーもどき摩訶不思議なウィーズナーの世界

 話題になっていたので『Flotsam (Caldecott Medal Book)』(邦訳『漂流物』)を手にしたけれど、聞きしにまさる文字なし絵本だった。
 顕微鏡で浜の生態を観察していた少年が、波に打ち寄せられた年代物のカメラを拾う。中にあったフィルムを現像してみると! 写真に現れたのは、想像を絶するシーンばかりだった。宇宙人が住んでいるような海洋世界の様子、今まで少年と同じように海岸でこのカメラを手にしたであろう子どもたちの笑顔――。傍らにあった顕微鏡で写真の中の写真を何倍にも拡大してたどっていく趣向は一見、『Zoom (Viking Kestrel picture books)*1のようであり、ひとつの物から関連づけて展開される趣向は『The Red Book (Caldecott Honor Book)*2のようでもあり。(これら二作品の大元アイデアは、ウィーズナー作品にあるのだろうが。)
 遠近を大胆に使い分ける構図がアニメーションのように流れ、SF、ミステリー、ファンタジーの同居する奇妙奇天烈、摩訶不思議な世界がたっぷり堪能できた。いったん入り込むと、やみつきになりそうな感じがする。中高生も夢中になると思う。時間を越えて、どこかにぽっかりワープしたいときおすすめ。(asukab)
amazon:David Wiesner

  • 今までの作品集大成の感もあり

Flotsam (Caldecott Medal Book)

Flotsam (Caldecott Medal Book)