Library Lion としょかんライオン

 『Library Lion』(邦訳『としょかんライオン (海外秀作絵本 17)』)を読み終え、しばし涙。「愛と感動の名作」とか「珠玉の名作」という形容がぴったりの絵本だった。これは、まるで小説か映画を味わった後のような読後感。
 お話は、こんな風に始まる。「ある日、図書館にライオンがやってきました」――。貸し出し係のマクビーさんやまわりの人々はびっくり。どうしていいのかわからず、すぐ図書館長に知らせたが、「ライオンは、きまりをやぶったのですか?」と一言が返ってきただけ。使い方のきまりを守っている限り、図書館ではライオンだって大歓迎なのだ。それからというもの、ライオンは毎日やってきた。
 主な登場人物は、ライオン、図書館長メリーウェザーさん、貸し出し係マクビーさん。あとは館内の本好きな子どもと大人たち。ちょっと国語の課題のように、それぞれの特徴などを挙げてみようか。ライオン=まっすぐな心の持ち主。お話では「がおー」とほえるだけで話さず、擬人化されていない。無言のキャラクターだけに、行動で物語るメッセージが胸に響く。図書館長メリーウェザーさん=冷静沈着で礼儀正しく、暖かい心の持ち主。図書館コミュニティーを心から愛している。貸し出し係マクビーさん=杓子定規でものごとを見てしまう、軽率なあわて者。でも、感じる心は持っている。
 人々から愛され図書館で仕事まで手伝うようになるライオンだったが、あるできごとがきっかけで、きまりをやぶり、姿を見せなくなる。図書館をめぐり、友情とコミュニティーの愛が描かれた心温まるお話である。ホークスのイラストが、居心地のいい、しかも伝統を感じさせる館内の雰囲気をたっぷり伝えてくれ、うれしくなってきた。
 作者がニューヨークの大学図書館で働いていたことがあるということで、どうしても九月十一日付けで記録しておきたかった。(asukab)
(訂正:「ニューヨーク公立図書館で司書をしていた」→上記へ。10-16-06)
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  • 舞台となったニューヨーク公立図書館(5th Ave.と42nd St.)の彫刻ライオンが、きっとこのライオン

としょかんライオン (海外秀作絵本 17)

としょかんライオン (海外秀作絵本 17)