Liu and the Bird: A Journey in Chinese Calligraphy リュウとゆめのとり かんじの旅

 日常生活で興味の湧くことがあるとしたら、それは主に「how=どんな風に、どんな感じ」で表せるものになる。つまり5W1Hのうち、残りの「when=いつ、where=どこで、who=誰が、what=何を、why=何故」にあたる部分にまったく興味がない。5Wは唯一、家族(次に挙げるとしたら、ご近所とか親しい知人)に関して分かり合っていればいいことで、対人関係では5W系の情報で迫る発想を軽視して1Hの感性に重きを置く姿勢がもっとも心地いい。昔からの軌跡を追うと、こども・学生時代=感性そのもの、社会人時代=実務・情報重視、親になってから=感性重視となり、現在小さな頃と同様なものを持ち合わせる日々を送る。子育て中なので、当然か。
 『Liu and the Bird: A Journey in Chinese Calligraphy』を読み、なぜかわからないけれど上記5W1Hの私的公式を結びつけた。実生活とファンタジーの中で、同じ公式が適応できた。
 娘が「このお話って、夢なの?」と尋ねてきたように、ストーリーは儚い夢想に描かれる印象を与える。冒頭、夢の中でおじいちゃんの声を聞き、会いに行こうとリュウが旅に出る。不可思議な点といえば、両親が出てこないことと子どもの一人旅。そして最後の一言も、「もしかして夢のできごと?」と思わせた。まるで、障子の薄明かりに包まれたような感じだ。 
 でも、ここには「how」が巧みに描かれる。訪ね歩く先々で示される象形文字、毛筆の楷書が、凛とした美しさを放つ。印刻版画と漉き紙にほんのり着色されたアートスタイルには、一目で魅せられた。5Wはさておき、一番味わいたい1Hがみごとに表現されていて美味な一冊ではないか。原書は、フランス語の絵本。米国では高く評価されないと思うけれど、描こうと試みている世界に通じるものがあった。
 文章でも芸術でも日常でも、わたしは常に「how」を意識し、感じていたい。ここから5Wに入っていけば、さらに深い1Hが味わえ、全体が見える。
 巻末に、漢字遊びなどアクティビティーが紹介される。収録漢字は「夜、月、星、子、川、杆(棒の意)、森、樹、末、交、田、女、米、人、休、从(従の意)、山、雪、羽、足、日、明、竹、看、画、愛、口、手、郷、鳥」。(asukab)
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  • 版画と紙、楷書の美しさにうっとり

Liu and the Bird: A Journey in Chinese Calligraphy

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