I AM I われは王

 『I Am I (Neal Porter Books)』の表紙と裏表紙には、少年二人の叫ぶ姿がある。「I AM I」――。まるで自分が王のごとく、二人は川を境界線に力の示し合いをした。これでもか、これでもかと競えば競うほど大地は荒廃し、悲しさが少年たちを包み込む。
 争い、報復の愚かさを単純明快に描く絵本は、中世の叙事詩、あるいは近未来を描くアニメーションのように視覚イメージ先導で進んでいく。丘、川、雨、花、鳥……といろいろな象徴が登場するので、読者はさまざまな思いを巡らせることになるだろう。少年たちの放った言葉が邪気となり、その後やさしさに変わる場面が印象的だった。

 北米チョクトー族の教えからアイデアを得た作品とあとがきにあり、今夏チョクトー族の絵本レビュー((Crossing Bok Chitto ボク・チットー川を越えて 2006年8月8日))を書いたばかりだったので奇遇。「一度に川の両岸に立つことはできない(=二つの文化に属することはできない。)けれど、川が狭くなれば、対岸に渡り、互いに交わることができる」。わかっていても、実現が難しい行いである。(asukab)

amazon:Marie-Louise Fitzpatrick

  • 最後のページもお楽しみ

I Am I (Neal Porter Books)

I Am I (Neal Porter Books)