すきすき ちゅー!

 登校前に時間があったので、娘と『すきすきちゅー!』(原書『Hey, I Love You!』)を読んだ。晩ご飯を取りに行くため森の向こうに出かけてゆくお父さんねずみと、留守番をする子ねずみちゅーちゃんのお話。
 お留守番の決まり「かけがね がっちゃん、かぎを かちゃ。カーテン しゅっしゅっ、あかりを ぽっ。これで あんしん、とじまりできた。どらねこなんか こわくない!」を確認して、お父さんは出かけていったのだけれど、あれ、大切なことを忘れてるよ、「とうちゃーん、まってー! わすれものが あったよー!」。ちゅーちゃんはお父さんを追いかけていくことに。ああ、どらねこが近くで息を潜めているのにも気づかずに……。
 この絵本を初めて読んだとき、お父さんを「とうちゃん」と呼ぶちゅーちゃんのかわいらしさにほんわか魅せられて、なかなか書店を後にできなかった。「とうちゃん」という響きの温かさ――こういう親子の愛情こそ、絵本の真髄。
 作品にはお母さんが登場せず、娘がさっそく聞いてきた。「お母さんはいないの?」――絵本って「お母さんと子ども」を描くものがほとんどだものね、彼女の疑問ももっともだと思う。「お母さんのいないおうちなのかもしれないよ」と話すと、「かわいそうだね」とぽつり。そうね、お父さん、お母さんといっしょに家族みんなで暮らすことが、子どもに一番の栄養を与える環境よね。当たり前のことを娘から指摘されると、ずずーんと胸に響いた。
 享受できなかった愛情を、人間は一生かけて埋めていこうとする。その部分、何かの形でわたしたちが分けてあげられたらいいなと思う。(asukab)
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  • とうちゃんのハグはあったかい!

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