Is There really Human RACE? 「きょうそう」って なあに?
話題の絵本『Is There Really a Human Race?』を娘と読んだ。生きる意味を教えてくれる絵本は、大人の心にこそ、ぐっと入り込んでくる。「human race(人類)」が「人間の競争」と重ね合わせた意味で用いられる言葉遊びに娘は気づかなかったと思うけれど、他人と比べて競争することより、途中で見えるさまざまな光景・できごとを楽しむ人生のほうが平和につながるよね、というメッセージは伝わったと思う。偉業を成し遂げる人は、競争に勝つことを念頭に置いているのでなく、過程を楽しんだ結果、すごいことをしちゃったことに最後に気づくんだろう。
公園のベンチで男の子がお母さんに尋ねる。「ねえ、にんげんレースって、ほんとうにあるの?」「あちこちでやってるの?」「いつ はじまったの?」「だれが、いちについて よーい、どん!っていったの?」「それって、ぼくのうまれた日にはじまったのかな?」「しりたくて むずむずしちゃう」……。
こうして、赤ちゃんとしてこの世に生をあずかった日から、一人の人間が競争社会に組み込まれていく様子が、おもしろおかしくユーモラスなイラストで描かれていく。途中の文章は、ほとんどが男の子の質問。こうすることで、読者にも考えてもらう趣旨を取る。そして最後のほうに、お母さんがさらりと提案をする。「ときにはね、ゆっくりいくほうが いいこともあるの。いちばんさいごにいけば、とちゅうの きれいなふうけいが よくみえるでしょ」「いきるって、いっしょうけんめいやることよね? ほかのひとにかつことより、そのほうがもっと だいじでしょ」「いきるって、さいごに みつめなおし、たすけてもらいながら じぶんのはしってきたレースを ふりかえることよね?」――。この価値観、わかる人にはわかるけれど、見えない人にはまったく見えないだろうなあ。たとえわかっていても頭の中だけで、行動に矛盾の生じるときもある。
最初と最後の見開きに、地球のイラストが二ページにわたり大画面に描かれるのだけれど、その地球が「生きる意味」を象徴として伝えているように思えた。(左下に、アラブ人とユダヤ人がカードゲーム(「ゴー・フィッシュ」)をしている光景がある。)「人類」のために――たとえ小さな一歩でも――何ができるか。偉大なテーマをわかりやすく伝える絵本は、大きなメッセージを日常の視点から巧みに描いている。あっぱれ!(asukab)
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