A PLACE WHERE SUNFLOWERS GROW 砂漠に咲いたひまわり

 ハロウィンもまじかという頃、庭には夏の名残よろしくまだひまわりが揺れている。深まる秋の中、黄色い大輪をずっと目にしていたからかな。『A Place Where Sunflowers Grow: Sabaku Ni Saita Himawari』の記録がずいぶんと遅れてしまった。
 なぜ、砂漠の荒野で銃を持った兵士に監視されながらつらい生活を送らなければならないのか。小さなマリの心は沈んでいた。そんな気持ちを勇気付けてくれたのが、収容所で通ったアート教室。彼女はそこで友情を育み、明るさを取り戻していく。作品は、マリのまいたひまわりの種とカリフォルニアの家を思い出して描いた絵を背景に、少女の心の変遷を丁寧に描く。
 第二次世界大戦中の日系史を伝える絵本は、作者実母の収容所体験を絵本化した作品である。男の子が主人公の『Baseball Saved Us』(邦訳『かこいをこえたホームラン (世界の絵本)』)は息子と何度も読んでいたが、今度は主人公が女の子なので娘向き。しかも、お話はユタ州トパズ収容所が舞台だった。トパズ収容所といえば、『Topaz Moon: Chiura Obata's Art of the Internment』で知られる画家小圃千浦(おばたちうら)がアート活動を続けた地である。作者の祖父母もともに画家で、収容所アート学校創設に尽力した。
 強制収容体験は戦争と同様、子どもにしてみたら混乱以外の何者でもない。自分の力ではどうしようもない状況に置かれたとき、人を救うものは何か――。上記絵本二冊では、野球とアートが人々の心の支えになった。大きなものは一人で動かせないけれど、一人の心が満たされていたらそれは十分平和につながる種になる。野球やアートと同様、砂漠にまいたひまわりの種がそんな平和の象徴に思えた。(asukab) 
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  • 砂漠とひまわりの焼けた黄色が郷愁を誘う。日英併記

A Place Where Sunflowers Grow: Sabaku Ni Saita Himawari

A Place Where Sunflowers Grow: Sabaku Ni Saita Himawari