ONCE UPON A BANANA バナナが1本ありました

 絵本の題名『Once Upon a Banana』を劇場の公演タイトルとかけ合わせ、ダウンタウンの一角に巻き起こる愉快なできごとを描く文章のない絵本。文章がないからと、侮ることなかれ。文字以上に絵と構成が、ストーリーを巧みに物語っている。
 表紙には、大道芸人のおじさんと一匹のサル。このおさるさんが店頭に並んだバナナの山に興奮して走り出したところからすべてが始まる。表紙、見返し、中表紙、本文……と、スペースの無駄なくドタバタ喜劇は続く。街中に見える「ゴミは、ゴミばこに捨てましょう」とか「駐車禁止」「ペンキ塗りたて」など、標識や看板が何気なく次のできごとを想像させてくれ、思考が途切れなかった。次々と場面が変わり、スピード感、躍動感に引っ張られるという印象である。街中の人たちの表情、動作からいろいろな感情が読めて、子どもだけでなく大人も笑える質の高いエンタテイメントだと感心した。極めつけは、裏見返しの地図。ドラマの場所と連続性が一目でわかる。場面に戻って再確認し、またそこでハプニングをリプレイさせてみたりといろいろ楽しめた。おみごと! 一本のバナナから、いろいろな出会いがあった。(asukab)
amazon:Jennifer Armstrong
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  • 舞台はたぶんニューヨーク

Once Upon a Banana

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