がんばれ じゃがいも

 煮物・煮豆の季節到来。寒い季節、ぐつぐつ鍋の立てる音と湯気の匂いは、ほっと心の和みになる。選ぶ絵本も、やっぱり食べ物テーマの絵本が多い。
 待ってましたと言わんばかりにお出ましなのが『がんばれ じゃがいも (世界の絵本)』(原書『Brave Potatoes (Reading Railroad)』)だ。購入以来、はやく秋が来ないかと待ち遠しかったのは、表紙のじゃがいもさんたちだけでなく、わたしもそうだった。
 静まりかえった秋の夜、収穫祭のコンテストで優勝したじゃがいもたちが、会場からこっそり抜け出した。優勝したごほうびに、遊園地に繰り出すことにしたのだ。一方、町外れのレストランでは、コックのキザミッチョが料理のしたくを始めたところ。とうがらし、たまねぎ、ピーマン、にんじん……、ところが野菜スープを作るのに、肝心のじゃがいもがないことに気づいた。遊園地では、じゃがいもたちが大はしゃぎ。この歓声を聞きつけて、キザミッチョは「あいつらを つかまえてやれ」と大袋を携え、レストランを後にした。
 大鍋がいくつも並ぶキッチンで、豪快に――というより、少々乱暴に――料理に腕を振るうキザミッチョとじゃがいも軍団の対決が見もの。ころころした野菜たちの顔つきがまるで日本産なので、至極親しみが湧いた。できあがったスープはさぞかし美味しかっただろうと思うけれど、実は誰も味見ができなかった、というオチが付く。スープの具にならず、勇ましく勝利をたたえるじゃがいもたちの姿が何を意味するのかな。いささか疑問符で終る部分もあるが、愉快であればいいってことか。あたたかいスープが恋しくなるので、深まる秋に読むのがぴったりの絵本。(asukab)
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  • 野菜スープの日にはこの一冊!

がんばれ じゃがいも (世界の絵本)

がんばれ じゃがいも (世界の絵本)