The Red Lemon あかいレモン

 「赤いレモンって、本当にあるのー?」――。『The Red Lemon (Deluxe Golden Book)』の表紙を見て娘がつぶやいた。それで一気に真っ赤なレモンの存在が気になりだす。
 ぷくぷくまるまる元気な農夫マクフィーさんのレモン畑は、柑橘の香りがそよぐご自慢の畑。これまたぷっくり実ったレモンはぴかぴか光り、出荷されるばかりと思いきや、中にひとつだけ真っ赤なレモンがなっていた。完璧主義者なのか、マクフィーさんには自分の畑に赤いレモンの実ったことが許せない。え〜いと力いっぱい投げられたレモンは、対岸の島まで飛んでいった。さて、その二百年後……。
 思わずレモンパイやレモンクッキー、レモンシャーベットを思い描き、唾液がゴクリの絵本だった。すっぱいけれどさわやかなレモンのイメージが軽快な韻で謳われて、柑橘の魅力がたっぷりといったところ。そこに赤いレモンのご登場。これは要するに「異質」の象徴か。それも、時代の価値観により異質性が変遷すると描かれている。時代の潮流に受け入れられることは運命みたいなもの、ということか。カラフルなグラフィックデザインとは対照的に、「諸行無常」や「いく川の流れは絶えずしてしかも もとの水にあらず」を思い起こした。(asukab)
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  • 円形多用で描かれるので、形の授業で使えそう

The Red Lemon (Deluxe Golden Book)

The Red Lemon (Deluxe Golden Book)