A Drop of Water 一滴の水

 男の子がせせらぎで、指からしたたる一滴の雫を見つめている。ここから視点はどんどん上昇し、雨粒、せせらぎの流れ、池、滝を見渡すほどになる。ここまでくると、まるで悠々と弧を描く鷲になったかのような気分。鹿、ビーバー、ムースなど動物たちの生息地が小さく映り、北米の大自然を空から見下ろす視界はどんどん広がっていく。さっき見えた光景がページをめくるたびに小さくなり、眺め入るほうは面白い。こうして、水の流れや働きを紹介していくのだが、その方法が読者を飽きさせることのない大胆な構図を通してとあり、気球にでも乗り込んで自然ツアーに参加しているようだった。
 『Drop of Water』の作者は過去にも『Pond』(邦訳『池―水辺の自然』)『Bald Eagle (Walter Lorraine Books)』『Oak Tree』など、教室(授業)で大活躍する自然生態系絵本を出しているので、こういう描写はお手の物とさえ感じられる。巻末にはもちろん、各ページの用語解説が入り、教育的価値の非常に高い絵本に仕上がっていた。
 ただ北米の大自然を描くのであれば、人々はネイティブアメリカンにして彼らの生活を紹介するほうがより自然ではないかと感じてしまったのだけど、どうだろう。人物がすべてヨーロッパ系の人間で、空から見える農場もその形だった。なもので、この動物たちにこの場面が映ると、略奪された土地というイメージが無意識のうちに浮かんでしまうのだ。当地には「北米の自然=ネイティブアメリカンの世界」という意識があるので、そんな風に感じてしまったのかもしれないな。どうせなら他作品(『Pond』には確か登場していなかった)のように、人間は登場させなくてよかったかも? 夏向き。(asukab)
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  • 構図がおもしろいだけに惜しい

Drop of Water

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