The Great Valentine's Day Balloon Race こうさぎたちのバレンタイン

 イースターエッグ作りに忙しいうさぎのアボット一家が、バレンタインの日に開かれる気球大会に参加する。お隣りに住むうさぎの女の子ボニーと、最初は乗り気でなかったお父さん、お母さんに手伝ってもらい気球を準備したオーソンは大はりきり。賢いボニーといっしょに乗り込んで、大きなハート型の印されたゴールを目指す。
 『The GREAT VALENTINES DAY BALLOON RACE』は娘といっしょに読み、凍てついた冬にバレンタインという行事があってよかった、と心がしみじみとした絵本。中間色で描かれる冬の空気が凛としていて気持ちよかったし、気球大会に向けてのうさぎたちの心意気に心が華やいだ。アダムスのイラストは、色の載り方がクーニー*1に似ている。すうっと心の晴れる色の重ね方と輪郭線の描き方は、少なからず影響を与え合っていたのではとさえ思えた。
 エイドリアン・アダムス(1906-2002年)の経歴を調べてみると、地味ながらアンティークの美術画を扱うサイトに紹介されていた。幼少期をオクラホマで過ごし、1929年、ニューヨークのThe American School of Design に入学。卒業後、フリーランス・デザイナーとして展示、壁画、テキスタイル、グリーティングカードなどの制作に携わった。1935年、子どもの本を執筆するジョン・L・アンダーソンと結婚し、彼の作品に挿絵を描いたことが絵本作家の道を歩むきっかけとなる。1960年、1962年にそれぞれ『Houses from the Sea』『The Day We Saw the Sun Come Up』でコルデコット賞次席銀賞の栄誉に輝いた。
 残念ながら、書影がない模様。空が透き通っていて、清清しい表紙。(asukab)
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