Keeper of Soles くつやのとんち

 死神って、絵本というメディアに似合わないテーマじゃないか。幽霊やお化けとはまた違う存在で、拭いきれない黒い重さを携えた印象があったのだ。でも『Keeper of Soles』に出てくる死神は、顔が「足の裏」の形をしていて、なんとなくおとぼけ風だった。「おまえのたましい(soul)をいただこうとやってきたのじゃ」と靴屋を訪ねたのはいいが、はだしの足を目撃され「おしごとのあとに、足がいたみませんか。あなたにはいい<くつ>がひつようです」ということで何足もの靴を与えられることになる。その間、予定していた靴屋の死期はどんどん延びていき、終いにはお茶まで楽しむ仲に……。明るくカラフルなイラストと「soul=魂」「sole=足の裏」の掛け言葉がユーモアになり、なんとなく背筋が寒くなる話題を笑いでくるみ込んでいた。これを、受け入れるか入れないか。
 娘は「死神(Death)なんていや」と言っていて、実はわたしも同感なのだけど、こればかりは誰もが避けられない人間の宿命なんだよ――。靴屋のように自分だけの技で死神を遠ざけることができたらいいな、などと思う。(asukab)
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  • 描かれるストーリーとはうらはらに、登場する靴がいかしてる

Keeper of Soles

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