BELOW かいだんのした

 舞台は階段の一角。これを山と見立てたり、街にしてみたり、ジャックのイマジネーション遊びは仲良しのプラスチック人形ガイといっしょにとどまるところを知らない。傍らには、動物やおもちゃの車がところ狭しと場所を陣取っている。ミニチュアって、楽しいよね。動かないのに、見ているだけで心のほうが動き出しちゃう。
 『Below』を子どもたちといっしょに読み、彼らの幼少期を思い出したり、自分の幼少期を振り返ったり、親近感がたっぷりだった。まず家庭的、日常的な光景がいい。階段に開いた穴――ありそう、ありそう、こういう穴。そして、その下には、いったい何が? 暗がりに広がる空間に思いを馳せるだけで、わたしの心も躍り出す。ガイが落ちていったこの闇で、何が起きているのだろう。シンプルな視点だけど、自分たちの生活風景そのものが描かれるから、絵本は100%自分たちの世界でもあった。
 ぜったいにお母さんの視点で描かれた絵本だ。でも、それだけでなく、アーティストとしての粋なはからいもあちこちに生きている。ナイス・ジョブ! 構図が面白いし、アニメ制作に関わっていた経験が被写体をつかむアングルに出ていたと思う。実写と手描きスケッチを組み合わせた、家庭の香りがするあったかい絵本。男の子のお話だけど、女の子も同じハートで共感できると思うな。(asukab)
amazon:Nina Crews

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